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防災への展望

■防災への展望(1975年11月号 「近代消防」掲載)


最近、各方面より災害対策についての関心度が高まってきたことは、誠にご同慶の到りである。しかし、専門家あるいは権威といわれる人びとが素直にかつ、常識的に分析すれば、先見性ある災害予知や防災論などが確立されると考えられるのに、余りにも思いつき的要素が多すぎることは問題であろう。
そこで、懸念されるこれらの問題を含めて以下述べてみたい。  

災害とは、主として陸上における暴風雨、集中豪雨、豪雪、洪水、高潮、大地震、津波、崖崩れ、火山ガス、その他異常な自然現象または火事、爆発その他、人の活動に伴って発生する大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、騒音、振動、地盤の沈下、酸欠、悪臭、その他これらに類するものにより、人の生命、身体及び財産に被害を及ぼす行為、行動を含めているものと定義したい。
 
また防災とは、これらの災害を未然に防止し、災害が発生した場合における被害を最小限に止め、その拡大を防ぐことを意味するものと考えている。したがって、従来の狭小な組織消防の観念は通用しない、これらに幅広くしかも深みのある、様々な災害に対処するためにも、次ぎの様な事柄が改めて見直され、慎重な研究・討論・議論などが加えられる時期と考えられる。

1.防災行政の一元化を諮る意味での防災庁の新設
2.防災産業の発展と育成のための議論
などである。以下その内容を分析し述べることにする。

1.防災行政の一元化を諮る意味での防災庁の新設について
この件に関して、私は、1973年(昭和48年)9月18日、自由民主党本部で開かれた、同党消防議員連盟(会長赤城宗徳衆議院議員)世話人会の席上常任世話人である古屋亨衆議院議員(前自治政務次官)の紹介により「防災組織法の必要性と要旨について」発表する機会を得た。
 
その後1973年(昭和48年)11月14日、同党の地方行政部会(部会長小山省二衆議院議員)の議題となり、自由民主党の配付資料として採用されたものである。その内容は、次のとりである。

“防災組織法の必要性と要旨について”
近時、自由民主党の政策の中にも、経済成長第一主義から、暫次、福祉政策へと移行しつつある現状が見られることは、誠に注目すべきものがあり、なかんずく国民生活の安定を優先させんとする思想が生まれてきたことは、画期的な進歩というべきである。
このような思想は、これからの、政治・経済・文化、に一大変化をもたらすものであり、あらゆる角度から分析され、新しい時代の体系作りがなされるべきだと考える。

ある宗教家の言を借りれば,釈迦仏法では、この世は末法であり、あと80年も経てば、地球上に住む人類は滅亡するのではないかと、いわれている。真偽のほどはさておいて、今日的観点から考えて19世紀的、学問・化学・科学等々は再検討の時にきているといえよう。そして、今までの知識に別次元からのファクター即ち、智慧などを投入し、新しい新世界の発見に努める必要性を痛感する。

公害問題にしても、われわれに周りには・有害(毒)ガス・爆発ガス・重金属類・石油類・放射能(線)等があり、これらの複合汚染に至ってはほとんど解明がなされていない。この現状は、誠に憂慮されるべき事態であろう。

わが国は国土が狭小で人口も多く、一地域に産業が密集しているので、人為的災害・自然的災害が多発化、大規模化している現状であり、これらに対し無策のまま座視することは許されるべきでない。なぜなら、子々孫々に残し得る有形無形の財産をあたら失う結果になりかねないからである。

そこで、この際政府は当面の政策のうちでも、改めるものは勇断を持って改めるべきであろうと考えられる。そして、当面早急に考慮されるべきことは防災組織の確立を置いて他にないであろう思う。なぜなら、国民の不安醸成のコンセンサスは、まさしく公害、地震(予知をふくむ)を中心とした対策の不備にあるからである。

いうまでもなく、現行の消防組織法は、もっぱら火災に対処する消防組織の整備を目的として立法されたものである。しかし、時代の推移は・人口の過度の都市集中・建造物の稠密高層化・自動車その他交通機関の激増と輻輳高密化・河川地形などの自然条件に対する加工の高度化・石油類及びそれらに関連する重化学工業の独善的とも考えられる産業の拡大を招き、ひいては公害・交通事故などの人為的災害の大規模化、多発化をもたらし、一度、巨大地震などの天災地変が起これば、およそ予測し難い甚大な国家的恐慌、荒廃が瞬時にして発生することは疑いのないところである。その為には、権限が各機関に分散している関係組織を省力化し関係組織の統合を図る必要があり、いわゆる防災組織法の立法化が痛感されるのである。

ところで、周知の通り。現在の消防組織は、戦前の地域的民間組織たる消防団のあり方、ないし機能を主体とした運営管理が行われてきた。といっても過言ではない。

これからは、消防の時代から防災の時代へと変革期を迎えなければならないのである。そこで、現在の消防組織から脱皮した多角的・効率的で、しかも近代的に一本化した機能を発揮しうる、そしてその実効をも十分期待しうる、特別司法警察機能を具備した防災組織機構が考慮されなければならない。
そのため、機能の偏在する現在の消防組織を母体としながらも、あらゆる防災機能を発揮しうる防災組織機構改革に着手、いな新設する必要が痛感されるのである。
そこで、消防庁を格上げ改組し、防災統合の庁として「災害対策基本法」の所管庁とすべきである。また、防災組織は独立化、近代化するとともに防災職員の名称を防災官とし、特別司法職員の権限を付与することで、防災職員の人材の確保、士気の向上、待遇の改善を図るとともに、関連する民間団体との癒着関係遮断、浄化に資すべきである。
そして、大蔵省(保険部)・通産省・農林省・建設省・労働省・環境庁・国土庁・地方自治体の権限のうち防災及びこれに直結するものを、防災庁に移管集中すべきである。
防災庁は、国家行政組織法第3条第2項の規定に基づき設置され、防災庁の長官は国務大臣を持ってこれに充て、閣議の席上で報告決定された事項を敏速に処理するとともに、各省庁間との連絡が容易に図られるようにすべきである。

さて、次に防災庁の組織は内部部局として長官官房・総務局・災害局・公害局・査察局・とし消防局に救急部、総務局に保険部を設けるべきであると思考する。付属機関として、防災大学校と防災総合研究所および災害保険査定委員会を付置すべきである。また地方機関として、管区防災局(全国を・横須賀・舞鶴・下関の三地区に分割)を設置し、管区防災局に防災学校を置くべきでなかろうか。
また、都道府県に都道府県防災部を置くべきであり、以下下部機構についは、省略する。人事に関する事項についても、当然国家公務員法によることとすべきで、防災官および防災官補は当該都道府県防災部の管轄区域内において職権を行うものとし、防災に関する違反事件を査察するため必要があるときは、その所属する官署の所在地を管轄する地方裁判所または簡易裁判所の許可令状を受けて、捜査。差し押さえをすることができ、違反があるときは、告発の手続をとることができることとすべきである(以上は国や地方財政法と総定員法よりの問題もあろうが、ここでは防災の見地より判断した。)。
そして、防災に対する国民意識の向上と国民生活安定にため、災害に関する国民皆保険制度の実現を同時に図るべきでなかろうか。

自由民主党が以上の問題について、党総力を挙げて、四つに組むか組まないか、基本的姿勢について大いなる疑問をもっている。
そういう組織を造るか造らないかは、この際問題外である。すなわち、このような組織を設置すべきであるという時代の要求にどの程度の反応を示すかは政治判断だけである。
いうまでもないが、この構想に反対する野党はおそらくありますまい。なぜなら、この構想が国民の心の深層に流れる合意であるに相違ないと確信するからである。(防災評論家)

福島原子力発電所

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1975年4月送稿
佐々木 勝朗

 

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